本記事は、東洋びより編集部が取材を依頼して制作した記事です。掲載料・商品提供・その他の取引関係はありません。

年末年始は、誰かと食卓を囲む機会が増える季節。楽しみな一方で、「これを食べてもいいのかな」と気になったり、食べたあとに自分を責めてしまったりすることもあるかもしれません。

フリーランスの管理栄養士として活動する高波紗希さんが大切にしているのは、栄養だけでなく、食べるときの気持ちにも目を向けること。ご自身も食との関係に悩んできた経験から、「完璧にしすぎないバランス」を伝えています。

食事の正解をもう一つ増やすのではなく、自分にとって無理のない食との付き合い方を考えるために。東洋びより編集長・濱田文恵が、お話を伺いました。

※対談は、取材時の発言の趣旨をもとに、順序や重複を整理・再構成しています。

1 食べ物を変えるだけでなく、自分の気持ちに目を向ける

濱田さん濱田さん
まず、今の活動について教えてください。
高波さん高波さん
今はフリーランスで管理栄養士をしています。以前は高齢者施設や保育園で管理栄養士として働き、調理にも携わっていました。
濱田さん濱田さん
「食とこころ」を大切にしているのは、ご自身の経験も関係しているのでしょうか。
高波さん高波さん
私自身、高校生のころから摂食障害に悩んだ時期がありました。食べ物や人の目、外見がいつも気になって、同窓会や卒業旅行などに行けないこともあったんです。食べることも、人との関係も、生きていくうえで大切なのに、そこを楽しめないのはつらい。そういう人を減らしたいという思いがあります。
以前はカロリーばかり気にしていました。その後、食について学ぶなかで、新しく知ったこともたくさんありましたが、今度は「この食材はいけない」「こういうものを選ばなければ」と、別の基準で食べ物を気にするようになってしまって。私の場合は、かえって食べることが楽しめなくなった時期もありました。
濱田さん濱田さん
食べ物を選ぶ基準を変えても、苦しさがなくなるとは限らなかったんですね。そこから、どんなふうに自分と向き合ったのでしょう。
高波さん高波さん
手帳に、食べたものと、そのあとに感じたことを書くようになりました。それまでは、自分に対しても、食べ物に対しても、悪いところばかり見ていたんです。
いつもなら食べたあとに反省して、自分を否定してしまうところを、その食べ物のいいところも書いてみる。たとえば、いただきものなら「この人が私のことを考えてプレゼントしてくれたんだな」「愛情がこもっているな」とか。自分の感情に目を向けるようになりました。
濱田さん濱田さん
何を食べるかだけでなく、それをどう受け止めているかに目を向けたんですね。
高波さん高波さん
そうですね。私にとっては、食べ方を考えることも、自分の気持ちと向き合うことも、どちらも大事だったと思っています。

2 食べ物にも、自分にも、厳しい判定ばかりしない

濱田さん濱田さん
食に関する情報がたくさんある今、管理栄養士として一番伝えたいことは何ですか。
高波さん高波さん
バランスですね。栄養のバランスも、ハレの日と日常のメリハリも大事。でも、完璧にしすぎないバランスが大切だと思っています。
「何を食べるか」だけでなく、「どんな気持ちで食べるか」も大切にしたいです。私自身、以前は罪悪感を持ちながら食べていたので、食べることを楽しめるようになった変化は大きかったです。
濱田さん濱田さん
とはいえ、食べることに不安や罪悪感があるとき、すぐに「楽しもう」と切り替えるのは難しいですよね。そんな人には、どんな言葉を届けたいですか。
高波さん高波さん
不安を感じる自分のことまで、否定してしまっていることがあると思うんです。「こんなことを感じてはだめだ」とか。でも、感じてはいけない感情はない。まずは、そう感じている自分を受け入れるところからでいいと思います。
私も、自分の嫌だと思うところをなくそうとしていました。でも、そこも含めて自分なんだと思えるようになってから、生きやすくなりました。マイナスだと思うところばかりに目を向けるのではなく、いいところもある、と見方を変えてみる。そのことは、食べ物との接し方にもつながっていると思います。
濱田さん濱田さん
食べ物だけにスポットライトを当てるのではなく、自分を見る目にも気づく、ということですね。
高波さん高波さん
そうですね。たとえば、コンビニの食べ物も、ある人にとっては生活を支える大切なものですし、被災したときには、生きていくために必要な食べ物にもなります。ひとつの面だけで「悪い」と決めてしまわずに、違う面にも目を向けられたらと思います。

3 「自分に合う」は、体だけでなく、気持ちと暮らしからも考える

濱田さん濱田さん
薬膳や腸活など、食についていろいろな考え方があります。情報が多いなかで、自分に合うものはどう選べばいいのでしょう。
高波さん高波さん
私も、いろいろ失敗してきました。だからこそ、体だけでなく、心や生活との相性も含めて見てほしいと思っています。
食後に満足できているか、我慢ばかりしていないか。体調はどうか。食事を楽しめているか、自分を否定する気持ちが強くなっていないか。そして、今の暮らしのなかで無理をしていないか。そういうことを、全体で考えるんです。
食事は、ずっと続いていくものですよね。「これを続けるのはしんどいな」と思うなら、自分には合っていないのかもしれない。戻したり、変えたりしてもいいと思います。
濱田さん濱田さん
一般的に「いい」と言われていても、自分に無理がないかを確かめることが大事なんですね。
高波さん高波さん
そう思います。まず、おいしくないと感じたり、食べたいものをずっと我慢していたりするなら、その気持ちにも目を向けたいですね。

4 今日の食卓で、一つだけ目を向けてみるなら

濱田さん濱田さん
毎日の食事では、味や楽しさをどんなふうに大切にしていますか。
高波さん高波さん
食べることに向き合って、楽しく食べることを大切にしたいです。でも、そう言っている私自身も、早食いになることがあります。子育てや仕事をしていると、なかなか理想どおりにはいかないですよね。
何かをしながら食べることもあるけれど、食べるときは、その一つのことに集中する。そういう時間も大事にしたいと思っています。
濱田さん濱田さん
私も、子育てのなかで慌ただしく食事をしてしまうことがあります。食べるものを選ぶだけでなく、目の前の食事を味わうことも大切にしたいですね。
高波さん高波さん
あとは、その食べ物がここに届くまでに、誰が育てて、誰が作って、包んで、運んでくれたのか。そこには、たくさんの人の時間やエネルギーが入っています。そういうことを思い浮かべながら、感謝して食べたいと思っています。
濱田さん濱田さん
栄養や成分だけでは見えてこない、食べ物の一面ですね。子どもたちにも伝えていきたいです。
高波さん高波さん
自分に対しても、食べ物に対しても、マイナスばかり見ていたころとは、見え方が変わったと思います。いいところにも目を向けてみる。そのことを大事にしたいですね。

5 食事のことを考えるのが毎日苦しいなら、一人で抱えない

濱田さん濱田さん
一人で抱えず、専門家に相談したほうがいいと感じるのは、どんなときですか。
高波さん高波さん
「何が正しいのかわからない」と、何をしても迷ってしまうとき。過食が止まらなかったり、自暴自棄になりそうだったりするときも、相談してほしいと思います。
食事のことばかり考えていて、毎日苦しいなら、話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。一人で抱えずに、相談してほしいです。
濱田さん濱田さん
自分だけで答えを出そうとしなくてもいいんですね。今日はありがとうございました。

食べたものを採点する前に、今、自分はどんな気持ちでいるのかを見つめてみる。高波さんのお話から伝わってきたのは、食べ物にも自分にも、一つの基準だけで厳しい判定をしないという姿勢でした。

誰かと囲む食卓でも、一人で食べるいつものごはんでも。「こうしなければ」を増やすより、自分にとって無理がないかを確かめる。その視点を、季節が変わっても大切にしていきたいと思います。

プロフィール

高波紗希|管理栄養士。高齢者施設や保育園での勤務を経て、現在はフリーランスとして活動。自身の経験を背景に、「食とこころ」の両面を大切にする考えを発信している。

取材・文:濱田文恵(東洋びより編集長)

東洋びよりからのお知らせ

本記事は、高波さん個人の経験と、食との向き合い方についての考えを紹介するものです。手帳への記録を含め、特定の方法による摂食障害の治療や回復を勧めるものではありません。食事に関するつらさを、気持ちや感謝が足りないせいと捉える必要はありません。食物アレルギーや治療上の食事制限については、医師などから受けている指示を優先してください。

相談の目安 食事や体重、体形のことが頭から離れずつらいとき、食事を極端に抜く・食べすぎてしまうことが続くとき、体調に変化があるときは、一人で抱えずに相談してください。かかりつけ医や心療内科・精神科のほか、お住まいの地域の精神保健福祉センターでも相談できます。

本記事は、東洋びより編集部が取材を依頼して制作した記事です。掲載料・商品提供・その他の取引関係はありません。